ガオラオというのは、ヌアトゥンと呼ばれる中国からの移民が伝えたビーフの煮込みの入ったスープのこと。中国で広く食されている豚の煮込み料理、東坡肉から派生した数ある料理の中の一つだという。元々はビルの高層階に入っているような高級レストランで扱いがちな高級料理だった。だから中国語の「高楼(เกาโหลว)」が訛りガオラオ(เกาเหลา)と呼ばれるようになった。ガオラオはそのあとに王室に入り宮廷料理の一つにまでなったらしい。そんなガオラオが大衆化したのは第二次大戦が始まった頃。ピブーンソンクラーム政権は食糧難解決の道になるとして中国から伝わった米麺を推した。愛国的な政策と併せてタイの国民的ヌードルとされるパッタイが生まれたのはこのとき。このときガオラオには米麺が投入された。タイ式ビーフヌードルの誕生だ。だから、ビーフヌードルの麺抜きがガオラオなのではなくて、ガオラオの麺入りがビーフヌードルなのだ。しかし、現在ではガオラオという言葉は麺料理全般の麺抜きを指す言葉になっている。麺抜きにしてスープやおかずとして白いごはんと食べる。ラートナー(あんかけ麺)のガオラオ、カオソーイ(カレーヌードル)のガオラオなどという表現も目にしたことがある。
ヌアトゥンには熱狂的なファンが多い。観音信仰などを理由に牛を食べない人が少なくないためか総じてビーフがいまいちなタイにおいて、おいしいビーフといえばヌアトゥンだ。米麺クイッティアオと食べるもよし、ガオラオとしてごはんと食べるもまたよし。ヌアトゥンのお店には名店が多く、おいしいお店があちこちにある。
その名もヌアトゥンミンブリー。ミンブリーを代表するヌアトゥンのお店は、廃墟化した古い映画館がある路地の中ほどにある。この日はごはんの気分だったからガオラオを注文した。とろとろに煮込まれた牛肉と牛スジ、茹でた牛肉とレバーも入っている。ひとくちスープをすすって思わずンーフーと声が出る。ここのスープは甘みが強い。そのまったりとした甘みの中にビーフの旨みがぎっしり詰まっている。肉やモツはしっかりと煮込まれていてスジはとろとろにやわらかい。これで60バーツは安い。おいしいガオラオは庶民の食卓にある現在でも高級レストランの味のままだ。
ビーフのガオラオ 60バーツ(約240円)
เนื้อตุ๋นมีนบุรี
ヌアトゥンミンブリー
6:00〜16:00 第3、4日曜定休
2023年6月某日10時半頃に訪問