全然知らなかったのだけど、スレンバンの海南会館には食堂があって、そこで様々な海南グルメが楽しめるらしい。南洋華人には出自ごとに組合のようなものがあって、たとえば潮州会館、福建会館というような感じでそれぞれ事務所を構えている。同郷の者同士で寄り添ってやっていくために作られたものだと思う。早速その海南会館に行ってみると、1階にわりと大きな食堂があった。人がたくさんいて混雑している。聞いていた通りで、海南関連のいろいろな料理が食べられるようだった。何を食べようか迷ったけど、ここで一番人気があるという海南チキンチョップを選んでみた。海南人は料理に長けていて、上海やマレー半島にて英国人のコックとして働いた人がたくさんいたのだとか。そこで身に着けた英国式の洋食を後に食堂や屋台などで提供し、そうして少しずつ変化していったのが海南華人式の洋食メニューだ。マレーシアでのその代表格がポーク/チキンチョップ。なにせ揚げた肉の大きな塊を食べるメニューなので、私はあまり頻繁に食べることはない。少し重い。しかし、見渡すとたしかにそれを食べている人が目立つ。決心して注文する。運ばれてきたチキンチョップは私の不安を煽るには十分すぎるぐらいに巨大だった。これは完食は無理だなと、せっかくのご馳走を前に食べる前から後ろ向きなことを考える。それにしてもおいしそうだ。まずはひと口食べてみようと、ナイフでチキンチョップを切り分けて口へ運ぶ。びっくりして笑ってしまいそうになった。まるでぷるんぷるんにやわらかい海南鶏飯(というよりはタイのカオマンガイ)の鶏肉にそのまま衣がついたかのようだ。少なくても私の頭の中にある「西洋のもの」のイメージではなかった。西洋の肉料理なのに、剛の感じがまったくない。だいぶ軟弱な感じの肉料理だ。たっぷりとかかっているソースも風味の奥のほうにどこかアジアンな雰囲気がある。これぞ食の伝播の真骨頂だと思う。特大の海南チキンチョップは予想に反してあっという間に私のおなかに収まった。ごはんが欲しくなったほどだった。無茶はせずにおいたけど、ごはんによく合いそうなおいしいアジアの洋食だった。
海南チキンチョップ 15リンギット(約470円)
海南美食館(森美蘭海南会館)
7:00~16:00 月曜定休